その12 我が家にて1

「ただいま」

「おかえりなさい」

「今日は、お客様をお連れしたよ」

私は、妻に忠右衛門を紹介した。

「忠右衛門さんです」

「拙者、忠右衛門と申します」

妻は、その忠右衛門の出で立ちに、とくに驚くことはしなかった。妻は、決して人を外見で判断したりはしない。笑顔を以て、出迎えてくれた。

「ようこそ、忠右衛門さん。どうぞ、お上がりください」

私が先に家に上がっても、忠右衛門は家に上がることを躊躇しているようだった。何か、廊下を眺めながら、じっとしている。

「どうか、しましたか?」

私は、忠右衛門に尋ねた。

「足を、洗いたいのです」

言いづらそうに、忠右衛門は答えた。はっとして、忠右衛門の足元を見ると、裸足に草履。そうか、、

忠右衛門の視線の先、廊下は、朝日が差し込み光が反射していた。妻の掃除が行き届いている。汚してしまうことを、怖れたのだろう。

妻は、すぐに風呂桶にお湯を張ってタオルと一緒に持ってきてくれた。

「ごめんなさい、気が付かなくて」

「かたじけない」

忠右衛門は、玄関に腰掛けて、草履を脱ぐと、丹念に足を洗った。そして、綺麗になった足を眺めて、とても満足そうに微笑んだ。

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