その15 我が家にて4

忠右衛門は、心身ともに、疲れている様に見えた。無理もない。記憶を無くしただけでなく、知らない時代に独り、放り出されたのだから。

「休んだ方が、いいわ」

妻は、居間に布団を敷いた。忠右衛門に、少し休むことを勧める。

「忠右衛門さん、ゆっくり、休んでください」

忠右衛門は、黙って頷き、そのまま横になった。暫く、虚ろな目で天井を見上げていたけれど、余程疲れていたのだろう、すぐに目を瞑り、眠ってしまった。

その寝顔を、2人で見る。妻は、言う。

「なんだか、あの子がまた家に来てくれたみたい」

「うん、そうだね」

妻は、棚の上に飾った、写真を見つめた。

私も、写真を見つめる。

そこには、私と、妻と、15歳になったばかりだった彼が写っている。もう、5年経ったんだね。

私たちは、忠右衛門に視線を戻した。その寝顔には、まだ少し、幼さが残っていた。

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村