2017-11

忠右衛門がゆく

その16 我が家にて5

「あなた、お仕事は」 時計を見ると、もういつもならば仕事に行くために家を出ている時間だった。 「行ってくる、忠右衛門のこと、宜しくね」 「はい、任せてください」 忠右衛門は、ぐっすりと眠っている。
忠右衛門がゆく

その15 我が家にて4

忠右衛門は、心身ともに、疲れている様に見えた。無理もない。記憶を無くしただけでなく、知らない時代に独り、放り出されたのだから。 「休んだ方が、いいわ」 妻は、居間に布団を敷いた。忠右衛門に、少し休むことを勧める。
忠右衛門がゆく

その14 我が家にて3

「320年、、、、そうですか」 忠右衛門は、視線を落として、じっとしていた。自分が時代を越えて来たという事実を、どうにか受け入れようとしているように見えた。
忠右衛門がゆく

その13 我が家にて2

妻は、煎茶を淹れてくれた。3人、揃いの湯呑みで。 お茶を飲みながら、妻に、忠右衛門と出会った時のことを話した。 「それで、家に来ていただいて」 「そうでしたか。大変、でしたね」
忠右衛門がゆく

その12 我が家にて1

「ただいま」 「おかえりなさい」 「今日は、お客様をお連れしたよ」 私は、妻に忠右衛門を紹介した。
忠右衛門がゆく

その11 家へ向かう

忠右衛門と、朝の浅草を歩いた。辺りは、すっかり明るくなっていた。 浅草寺の境内を抜けて、仲見世を歩く。仲見世通りは、店が開く前でも、シャッターに書かれた浅草の風景が、通り行く人を楽しませてくれる。 忠右衛門も、そこに書かれた絵をまじまじと見つめていた。私は、少し歩みを緩めながら、忠右衛門と共に絵を眺めた。