その11 家へ向かう

忠右衛門と、朝の浅草を歩いた。辺りは、すっかり明るくなっていた。

浅草寺の境内を抜けて、仲見世を歩く。仲見世通りは、店が開く前でも、シャッターに書かれた浅草の風景が、通り行く人を楽しませてくれる。

忠右衛門も、そこに書かれた絵をまじまじと見つめていた。私は、少し歩みを緩めながら、忠右衛門と共に絵を眺めた。

通り行く人は、皆、忠右衛門を見て不思議そうな顔をしていたけれど、そんなに驚いた様子にも見えなかった。

忠右衛門の姿が、この浅草の町に何故だかとても馴染んで見えるからかもしれない。一枚の浮世絵を見ているような、そんな心持ちになっていたのかもしれない。

雷門を抜けると、大通りに出る。目の前には文化観光センターの高いビル、マンションが立ち並ぶ。そして、自動車の往来があった。

忠右衛門は、建物の大きさに驚き、自動車を見て目を丸くさせている。辺りを見渡し、呆然と立ち尽くしていた。

「箱が、走っている、、、これは、、」

私は、忠右衛門について、ある確信をしていた。