その13 我が家にて2

妻は、煎茶を淹れてくれた。3人、揃いの湯呑みで。

お茶を飲みながら、妻に、忠右衛門と出会った時のことを話した。

「それで、家に来ていただいて」

「そうでしたか。大変、でしたね」

「何も、思い出せないのです。自分の名前以外は。それと、、異次元に迷い込んだような感覚が。気持ちが、落ち着きません」

私が出会いを話した後で、忠右衛門は、心の内を話してくれた。

私は、妻と顔を見合わせた。妻が頷く。

「忠右衛門さん、これからお話しすることは、私の推測でしかありません。しかし、聞いていただけますか」

私は、忠右衛門に、自分の感じていることを打ち明けることにした。

「忠右衛門さん、おそらくなんですが、忠右衛門さんは、忠右衛門さんが過ごしておられた江戸の時代から、タイムスリップして来たのではないかと、思うのです」

「たいむ、すりっぷ?」

忠右衛門は、タイムスリップしている。馬鹿げた話だが、そうとしか思えなかった。

「時代を超えて、未来へ来たということです」

「未来へ!?、、、年、、、今は、元禄ではないのですか?」

私は、静かに首を横に振った。

「元禄といえば、江戸時代中期だわ」

妻が言った。

「今は、平成という年号です。元禄からだと、320年くらい先の未来、ということになるかしら」

その320年という時間について考えてみた。時間の長さを言葉で聞いてみると、想像していたよりもずっと長く感じた。

3人とも、その長さに驚き、しばらく声が出なかった。