その14 我が家にて3

「320年、、、、そうですか」

忠右衛門は、視線を落として、じっとしていた。自分が時代を越えて来たという事実を、どうにか受け入れようとしているように見えた。

「忠右衛門さん、大丈夫よ。未来へ来れているということは、その方法があるということ。過去へ戻る方法も、きっとある。安心して、きっと、戻れるわ」

妻の言葉に、私も頷いて応えた。忠右衛門は、少し微笑んだけれど、何も語らなかった。

「忠右衛門さん、よかったら、、、」

その様子を見て、妻は言うと、私の顔を見た。

そうだね。私も、妻と同じ気持ちだった。妻とは、言葉を使わなくても、大抵のことは意志の疎通が図れた。私は、頷くと、妻の代わりに忠右衛門に声を掛けた。

「良かったら、元の時代に戻る方法が分かるまで、この家を使ってください。一緒に、過ごさせてください、協力、させてください」

忠右衛門の気持ちを考えると、どうにか力になりたいと思った。時代を越えて、独り平成の世に放り出され、記憶も戻っていない。とても不安だろうと思う。

忠右衛門は、私と妻の顔を見ると、深く頭を下げた。肩が少し震えている。泣いているように見えた。

「ようこそ、忠右衛門さん」

「よく、来てくれたね」